故日野原重明先生は、日本音楽療法学会会長をされていました。
先生のこれまでの業績の中で、特筆すべきことの一つに、
死というものに対する見方を変えさせたことにあります。
先生のおられる病院で、ある時、一人のおじいちゃんが危篤状態になりました。
子供や孫がベッドサイドで「おじいちゃん、先に天国に行っても、
私たちも後から行くからね。おじいちゃんさようなら、お世話になったね。」
と別れの言葉を述べた後、おじいちゃんの好きだったクリスマスキャロルを皆で唄ったそうです。
おじいちゃんは、目はもう見えませんでしたが、耳は聞こえているのです。
手を握ると反応してくるのです。
いよいよ心臓が止まって「お別れです」と言うと、
「おじいちゃん、良かったね。こんなに眠るように天国に行って。」と、
家族は口々に言いました。
歌を唄うことで、残された家族と
おじいちゃんの魂が一体となったのです。
音楽は死に向かって心を和やかにし、
残された家族の励まし支えとなるのです。